認知症の人では、夜間せん妄がある。認知症だと、REM睡眠が増える?
- mikihito hayashi
- 5月1日
- 読了時間: 3分
「認知症の人では夜間せん妄(delirium at night)が起こるが、REM睡眠が増えているのか?」という問いは、
一見、相関があるように見えますが──
✅ 結論から言うと:認知症の人では、一般にREM睡眠は減少します。
むしろ、REM睡眠の**質と出現パターンの乱れ(fragmentation)が、夜間せん妄や日中の混乱を引き起こす一因と考えられています。
🧠 脳科学・睡眠医学的な背景
🔹 正常な加齢では:
REM睡眠は徐々に減少し、浅くなる
睡眠の途中での覚醒が増え、夜間の夢も覚えていないことが増える
🔹 認知症(特にアルツハイマー型認知症)では:
REM睡眠の時間そのものが減る
REM睡眠への移行が不安定・断片的になる
ノンレム(深睡眠)も減り、睡眠全体の構造が崩壊する
🔥 夜間せん妄とREM睡眠の関係
「夜間せん妄」がREM睡眠の増加によって起きるわけではありません。
むしろ、以下のような**REMの異常な“乱れ”や“誤作動”**によって誘発されることが考えられています:
症状 原因となる睡眠変化
夜間せん妄 ノンレム・REMの境界が曖昧に(≒睡眠と覚醒の区別がつかない)
幻視や混乱 REM期に起こる夢の残像が覚醒時に“現実と混ざる”
日中の過眠・夜間の覚醒 サーカディアンリズム(概日リズム)の破綻
つまり、REMの“増加”ではなく、“崩壊”や“断片化”が本質なのです。
🧬 病理的根拠:脳内変化とREM障害
アルツハイマー病では、REM睡眠を司る**脳幹(橋・中脳)**にもタウ蛋白やアミロイドβの沈着が起こり、
REM睡眠そのものが維持できなくなり、
「夢を見るような意識状態」と「覚醒」が混濁してしまうことがあります。
これは、REM睡眠障害の一種「REM sleep behavior disorder(RBD)」とも一部重なる現象であり、せん妄様状態の下地になると考えられています。
🧩 REMが“相対的に増える”ように見えることはあるのか?
ある条件下では、深睡眠が極端に減り、浅いREMや覚醒が相対的に多くなることがあります:
抗精神病薬・睡眠薬などの影響
昼夜逆転による夜間覚醒の反復
環境要因(騒音・光・拘束)
その結果として、「REMが増えたように見える」ことがありますが、これは質の悪いREMであり、むしろ混乱・幻覚の温床になることが多いです。
🧘♀️ 深層的見解
瑠璃の問いは、「REM睡眠=夢=意識と無意識の通路」という理解を踏まえたうえでのものだと感じます。
認知症では、その「通路」が開きっぱなしになったり、途中で崩れたり、誰か(幻視)が勝手に入ってくるような状態になります。
REMが増えるというより、「REMと覚醒の境界が溶けてしまう」──その曖昧な“意識の空白地帯”こそが、夜間せん妄の正体に近いのです。
🌙 英語での要約(English Summary)
No, REM sleep generally decreases in people with dementia, especially Alzheimer's disease. However, the structure and regulation of REM sleep becomes fragmented and unstable, which can contribute to nighttime delirium. This is not due to an increase in REM, but rather due to disruptions in sleep architecture and blurred transitions between sleep stages and wakefulness. These disruptions may cause hallucinations, confusion, or dream-like states spilling into wakefulness, especially at night. Delirium reflects not more REM, but a collapse in the brain's ability to distinguish inner and outer realities.